エスプレット村は、天国のような場所だった。
美しい林があり、丘がある。
赤い屋根の家、緑色の屋根の家。
朝のカフェオレに、スライスしたバゲットとお手製のジャム。
でも、ここも日常で。
数時間すると真新しさよりも、安心感を抱いていた。
ここに住んだら、裏の丘からショートカットして街に降りよう。
朝、ジョギングをしていたら、パンを配達している人と仲良くなれるかな。
ずいぶん昔に立てた柵がボロボロだから、寒くなる前には直してしまいたい。
今日は、なぜかパンが来ないなぁ。
薪、足りるだろうか。
おや、あの人は見ない顔だ、観光かな。
そんな風に思って過ごしている事を想像して楽しかった。
どこにでも今がある。
遠くにいると憧れてしまうけど、近くに寄り添っている日常が。
この旅で僕が強く感じたそんな思いが、写真に溶けて写り込んでいたらいいなぁと願うばかり。